サンティアゴ大聖堂で最も象徴的な儀式であるボタフメイロ。この巨大香炉は、カリクストゥス写本の中で、『Turibulum Magnum』と記載されています。ボタフメイロという名前は、ガリシア語で煙をまきちらすものという意味があります。
サンティアゴ大聖堂ボタフメイロの歴史
カリクストゥス写本で初めて言及されているボタフメイロですが、この儀式が始まった正式な日程は、分かっていません。 ボタフメイロの起源は12~13世紀までに遡るのではないかと考えられていますが、ボタフメイロが大聖堂で使われたのは14世紀とされています。
ボタフメイロの時期を推定するもうひとつの要素として、大聖堂の丸天井が15世紀中ごろから建設されたのもヒントとなります。丸天井の梁に大きな滑車が設置されたのは、おそらくボタフメイロを支えるためでしょう。
1554年、フランスのルイ11世は、サンティアゴ大聖堂に奉納する銀製の香炉作成を命じます。しかし、19世紀始めにナポレオン軍により盗まれてしまいます。 新たにボタフメイロを作成しましたが、デザインをより簡素にし、材料を変えて重さを軽くするなど、大聖堂の典礼時に使用しやすいようにしました。
ボタフメイロの機能
ボタフメイロの主要な機能は、典礼行事の重要性を強調させることです。よって、聖年や特別な日のみ実施されます。
現在使用されているボタフメイロは、1851年のものです。当時、失われていた中世時代の習慣を回復する意図のもとボタフメイロがミサで使われました。 この年、ガライカという雑誌の中で、ネイラ・モスケイラ(Neira Mosquera)は、『ボタフメイロ“vota fumeiro』という言葉を初めて普及しました。 この言葉は教会がつけた言葉ではなく、当時のサンティアゴ市民の間で呼ばれていた名前であったとされていますが、紙面でこの名前について言及したのがサンティアゴで有名だった作家兼ジャーナリストだったネイラ・モスケイラでした。
これから約20年後、居場所がわからなかった聖ヤコブの遺骸が再発見されると、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの関心が高まり、巡礼者の数が増加すると、それに比例してボタフメイロの儀式の人気も上がりました。
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂のボタフメイロの基本情報
重量60㎏、高さ1m60㎝の巨大ボタフメイロは、太いロープでつながなくてはなりません。 ロープを引っ張ってボタフメイロを振ります。60m以上の弧を描きながら、速約70㎞の速さにまで達します。
巨大香炉をロープで引っ張るのは、ティラボレイロス(Tiraboleiros)と呼ばれる8人の男性グループです。 ボタフメイロが行われる日、ティラボレイロスは、普段ボタフメイロを保管する大聖堂博物館から大聖堂の中央祭壇前まで運びます。
香炉の中に、お香と炭を入れ、最後にロープに縛りつけます。 ボタフメイロの儀式で最も人目を引くのは 、滑車とロープのシステムにより香炉が少しずつスピードを増しながら大きく振れる動きです。
最後に、速度が落ちてきたところをティラボレイロスの1人がボタフメイロを捕まえて終了します。
ボタフメイロの儀式が行われる日は?
重要なお知らせ: 大聖堂内部の修復工事のため、現在ボタフメイロの儀式を見ることはできません。
特別な典礼行事の日か聖年の年に見ることができます。
06
1月主顕節
12
4月復活の主日
30
5月キリストの昇天祭
21
5月クラビホの戦いで使徒が現れた日
9
6月聖霊降臨祭
25
7月ヤコブの殉教
15
8月聖母被昇天の日
1
11月諸聖人の祝日
24
11月偉大なるキリストの日
8
12月無原罪聖母の日
25
12月クリスマス
30
12月使徒サンティアゴの移送
ボタフメイロの料金
上記の日程と合わない場合、大聖堂にお金を払って直接ボタフメイロを申請すれば、1年中お好きな日にボタフメイロを見ることができます。
ボタフメイロが動く様子を見る 特別な宗教儀式がある日以外で、ボタフメイロを見るには400~450€がかかります。この金額を見て、高いと感じられる方がいるかもしれませんが、メンテナンス等にかかる費用になります。ボタフメイロを一目見ようと、お金を集めてボタフメイロを申請する巡礼者や団体が大勢います。
ボタフメイロのご予約は、botafumeiro@catedraldesantiago.es まで直接お問い合わせ下さい。
巡礼者のミサ: 時間
重要なお知らせ: サンティアゴ大聖堂内部の修復工事により、次のように場所を変更しています。サン・フランシスコ教会(12:00のミサ)、サン・フィス・デ・ソロビオ教会(19:00)
巡礼の旅を終了し、サンティアゴへ到着した巡礼者を歓迎する儀式です。 ミサの中で、24時間前に巡礼証明書であるコンポステーラを獲得した巡礼者のリストを読み上げます。
リストで読み上げられるのは、団体グループの名前や巡礼者の国籍に巡礼を始めた出発地点です。
巡礼者のミサは、サンティアゴ大聖堂の中央祭壇にて、毎日12:00と19:30 に行われます。 聖年の間は、巡礼者の数が増加するので、通常の年よりも巡礼者のミサの回数がも増えます。
ボタフメイロの事故
巡礼者のミサの間、ボタフメイロは時速約70㎞の速さで大聖堂の翼廊いっぱいに弧を描いて動きます。巨大香炉の落下や衝突などのアクシデントは、儀式の参加者に非常に危険です。
今日まで、ボタフメイロの事故は4回、軽症のケガ人がたったの2人と大規模な事故は経験していません。
1499年7月25日
聖ヤコブの祝日、アラゴン王国のカタリナ王女に敬意を表してボタフメイロが行ったところ、香炉をつないでいた鎖が壊れ、ボタフメイロが銀細工の門を破って飛び出してしまいました。 しかし、この事故による負傷者はいませんでした。
1622年5月23日
フランス国王ルイ11世が贈与した銀製のボタフメイロをつないだ鎖の一つが壊れ、ティラボレイロスがいた場所に向かって落下しました。 ケガ人はありませんでした。
20世紀
正確な日付は分かりませんが、2回衝突事故がありました。- 最初の衝突は、アコライト(侍祭)が祭壇を降りた時にボタフメイロとの距離感を誤り、ボタフメイロと衝突。あばら骨3本を折り、病院へすぐさま運ばれました。
- この事件の1~2年後、サンティアゴ・デ・コンポステーラを訪れたドイツ人下院議員グループが、大聖堂にお金を払ってボタフメイロを申請しました。 美しい弧を描くボタフメイロの動きに驚嘆した彼らは、気づかぬうちにボタフメイロの通り道に接近したため、巨大香炉がグループの中の1人の顔をかすめました。鼻中隔を亀裂が入りました。
現在
現在、大聖堂内部にて修復工事が行われています。 2019年の1年間と2020年に関しても大聖堂から新たな告知があるまで、大聖堂内部で行われる巡礼者のミサは中止です。 ボタフメイロの儀式も中止となっていますが、大聖堂博物館内にある図書館でボタフメイロを見ることができます。